キャンピングカービルダーの問い合わせ返信AI開発
過去の回答履歴と車両カタログを学習したAIが、お客様からの問い合わせに対する返信案を複数パターン生成します。送信するかどうかは必ず人が判断する設計です。
課題
- 問い合わせの多くが過去に何度も答えた内容だが、毎回ゼロから文章を書いている
- 回答の質が担当者によって差が出る。ベテランが不在だと返信が止まる
- メールとLINEで求められる文体が違い、書き分けに手間がかかる
実施したこと
- 過去の回答履歴と車両・オプションのカタログ情報を取り込み、問い合わせ内容に応じた返信案を生成
- 同じ問い合わせに対して複数の案を出し、担当者が選んで手直しできる形に
- メール/LINEなど媒体ごとに文体を切り替え
- AIは下書きまでを担当し、送信は必ず人が判断する設計に
成果
導入前の状況
キャンピングカービルダーA社様には、Webフォーム・メール・LINEから日々問い合わせが届きます。その多くは納期・価格・装備・下取りなど過去に何度も答えてきた内容ですが、担当者は毎回ゼロから文章を書いていました。回答の質は担当者の経験に左右され、ベテランが不在だと返信が止まります。汎用の生成AIも試されましたが、価格や仕様を平気で間違え、自社の言い回しにもならないため、お客様に出せる文章にはなりませんでした。
システム構成と技術
- 過去のメールを取り込み、受信80,610通・送信5,198通の中から「問い合わせ→返信」の対応ペア581件を抽出。ペアにならない送信メールも「返信の見本集」として参照します
- 正式な価格表(車両249台・オプション200件)と過去の実見積325件を取り込み、問い合わせに出てきた車種やオプションについては正確な金額と、実際の成約構成に近い総額の目安を答えられるようにしました。原価と粗利はお客様にお出しする性質のものではないため意図的に取り込んでいません
- 公式サイトの会社概要・全モデルの仕様、来店予約やメンテナンスの案内ルールを会社知識として整理し、生成時に常に参照します
- 過去のやりとりからAIで抽出した営業FAQ辞書を持ち、問い合わせの語彙に合う項目だけを検索して注入します
- 返信案は3案を構造化出力で生成。担当者を選ぶとその名前で署名が入り、そのまま編集・送信・印刷できます
- LINE向けは宛名・署名なしの話し言葉で短めに、改行を多くした文体に切り替わります
- お客様ごとの過去のやりとりを参照し、続きの文脈を踏まえた返信ができます。生成した案と採用した案は履歴として保存され、送信した返信は次回以降の知識として自動で追加されます
- 社内向けに、納期・下取り・キャンセル規定などを何でも聞ける対話型のAIチャットも同じ画面に用意しました
この仕組みは、社内の資料を根拠にして答えるRAG(検索拡張生成)の実装例です。詳しくはAIチャットボット開発のページで、既存の業務システムへの組み込みは業務システム開発で紹介しています。
開発の進め方
取り込むメールの範囲から検討を始めました。当初は代表宛のアドレスのみを対象にする予定でしたが、実際には特許や取材などの対外窓口として使われており、顧客対応はLINEやフォーム経由が多いことが分かったため、会社の全アドレスを対象に変更しています。返信ペアの紐づけは、スレッド→お客様のアドレスと時刻→件名と時刻の3段階で行い、自動配信や業者宛を除外して品質を上げました。
運用開始直後の大きな修正は「その場で答える」という方針への転換です。初期のAIは「製作担当に確認のうえ改めてご連絡します」という先送りの返信を多用し、お客様の役に立ちませんでした。分かる範囲の車種・定員・装備・価格帯は具体的に書き、確認が必要なのは最終見積や特定在庫などに限る、というルールに改めています。
生成に数分かかっていた点は、参照する知識の件数と文字数を絞り、応答速度を重視したモデルへ切り替えることで30秒弱に短縮しました。過去のフォーム問い合わせをすべて集めてAIの推奨回答を用意し、担当者が1件ずつ承認すると、承認済みの回答が最優先の正解として使われる点検ワークフローも追加しています。
運用してわかったこと・今後
返信作成の時間が短縮され、担当者による回答の差も小さくなりました。AIの出力をそのまま送らず必ず人が判断する設計にしたことで、精度が完璧でなくても日々の業務で使える形になっています。営業以外のスタッフでも一次返信ができるようになったことも大きな変化です。
このAIは同社の見積・契約管理システムのメニューにも統合され、営業担当者が普段の画面から呼び出せるようになっています。今後は各営業担当者のメールボックスの取り込みを進め、学習データをさらに厚くしていく予定です。