アーチェリー用品メーカーの射形分析AI開発
アーチェリーブランド アーチェリー用品メーカーB社 と連携し、カメラ映像から射形を分析するフォーム分析AIを開発しています。
課題
- フォームの癖は本人では気づきにくく、指導者の目に頼っている
- 練習後半の疲労によるフォームの乱れを客観的に把握したい
- 専用機材は高価で、部活動には導入しづらい
実施したこと
- 市販のカメラ映像から骨格をリアルタイム推定し、引き手・押し手の角度や静止時間を数値化
- 1射ごとの再現性(均一性)や、振り上げ動作・疲労傾向をグラフで可視化
- ノートPC1台で動作する構成にし、練習場でそのまま使えるツールとして設計
成果
導入前の状況
アーチェリーのフォームは本人には見えにくく、指導者の目に頼るのが一般的です。練習後半に疲労でフォームが乱れていても、感覚では気づきにくく、指導者がいない練習では修正の手がかりがありません。市場には専用の計測機材もありますが高価で、部活動や個人の練習に導入するのは現実的ではありませんでした。アーチェリー用品メーカーB社様と、市販のカメラとノートPCだけで動く分析ツールの開発に取り組んでいます。
システム構成と技術
- 骨格推定には姿勢推定モデル(YOLO pose、全身17点)を使い、OpenCVでカメラ映像を処理するPython製のアプリケーションです。ノートPCのGPUを使ってリアルタイムに推論します
- デスクトップ版と、同じ解析をブラウザで表示するWeb版の2形態を用意。Web版は解析パラメータを画面から変更でき、再起動なしで調整できます
- 射のフェーズ(構え→振り上げ→引き分け→会→リリース→フォロー)は、引き手と顔の距離と手の速度から自動判定します
- 指標は4つ。会の間の手首・肘のブレを体格で正規化した「静止度」、各射のアンカー時の関節角度のばらつきを比べる「均一性」、押し手の軌跡を描く「振り上げ・引き分け」、射ごとの静止度の序盤と直近を比べる「疲労」です
- 録画済みの動画を解析して注釈付きの動画とCSVを書き出すオフライン版も作成し、複数アングルの一括処理に対応しました
- 再現性は、引き肘・押し肘・肩のライン・肘の高さ・引き尺といった項目別に評価し、頭の傾き・左右の肩の高さの差・押し肩の位置も加えています。逸脱の大きい射には「崩れ」のタグを付けます
- アンカーからクリッカー作動までの秒数を「ショットテンポ」として計測し、適正帯からの外れ(早気・粘り)と、前半と後半のドリフトを検出します
- 解析結果は依存ライブラリなしのHTMLレポートにまとめ、セッションを重ねるごとの推移も履歴として残ります。射ごと・セッションごとの総合点も表示します
カメラ映像から人の動きを数値化するこの技術は、画像認識・AIカメラ開発の応用のひとつです。製造現場の作業分析や安全確認にも同じ考え方を使えます。
開発の進め方
最初にカメラ不要の合成データでテストを通し、指標の計算が意図どおりであることを確認してから実映像で調整しました。実際の射手の動画で分かった問題は2つあり、会が短すぎる誤検出の射が統計を壊すこと、肩のラインの角度が計算上±180度で反転して見かけのばらつきが大きくなることでした。前者は最低会時間でのゲート、後者は角度の折り返し処理で解決しています。
プロ選手の映像を基準にする案も検証しましたが、試合中継はカット切り替え・スロー再生・クローズアップが多く、全身が実時間で連続して映る素材でないと解析できないことが分かりました。代わりにテンポの適正帯は文献をもとに較正し、レポートの凡例に出典を明記しています。
2D単眼カメラのため奥行き方向の動きは過小評価されます。そのため側面(射線に直角)から全身を撮ることを前提とし、正面からの映像はフォーム確認用として扱い、推移の計算には混ぜない運用にしています。
運用してわかったこと・今後
選手が自分のフォームを数値と映像で振り返れるようになり、感覚頼みだった修正ポイントを指導者と共有できるようになりました。上達を追うには、横から・実時間・全身・連続で1本に6〜12射を撮り、同じ射手IDで定期的に積み上げるのが有効です。
現時点では実射での本格的な検証を重ねている段階で、しきい値の調整を続けています。今後は、部活動向けスコアアプリとの連携や、複数選手の比較表示を検討しています。
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