果樹園向けAIカメラ見守り『はたばん』開発
収穫期の果物盗難や獣害に備える果樹園見守りシステム「はたばん」を自社で実証開発しています。
課題
- 収穫期の夜間、果樹園への侵入や獣害が心配
- 商用の防犯システムは電源・通信工事が前提で、畑には導入しづらい
- 誤検知だらけの通知では、かえって見なくなってしまう
実施したこと
- 小型カメラと人感センサーを組み合わせ、動きを検知した時だけ撮影・通知する省電力設計
- 電源のない畑でも使えるよう、バッテリー駆動と省電力通信(CAT-M)を採用
- 検知した画像をAIで判定し、人・動物を区別してLINEに通知する構成を設計
成果
導入前の状況
果樹園では、収穫期の夜間に果物が盗まれたり、獣に荒らされたりする被害が起きています。市販の防犯カメラは電源と通信の工事が前提で、電気も電波も引かれていない畑には置けません。屋外向けの監視カメラ製品もありますが、1台あたりの価格が高く、複数の畑に置くには負担が大きいのが実情です。さらに、動くものすべてに反応して通知が届くと、農家の方はすぐに通知を見なくなってしまいます。「本当に見るべきときだけ知らせる」ことが、この装置に求められる本質でした。
システム構成と技術
- カメラノードは、小型カメラ付きマイコン(ESP32-CAM)と人感センサー(PIR)、CAT-M通信モジュールで構成し、動きを検知したときだけ撮影・送信する省電力設計です
- 通信方式は姉妹プロジェクト「みずばん」で採用したLoRaメッシュも検討しましたが、画像を送れないため不採用とし、カメラ1台ごとに通信SIMを持たせる構成にしました
- サーバー側は外部ライブラリに依存しないNode.jsで構築し、警戒する時間帯(既定は19時から翌5時)をスケジュールとして設定できます
- 受信した画像はマルチモーダルAIで判定し、人か動物かを区別してLINE Messaging APIで通知します。AIの判定ができない場合は「未判定」として通知する安全側の動作にしています
- 端末からの受け口は画像と端末IDを受け取る1本のAPIで、未登録の端末は自動登録。ごく小さなデータは生存報告として扱い、端末が動いているかを把握できます
- ファームウェアは、自宅のWi-Fiで机上試験ができるモードと、CAT-Mで実際に送信するモードを切り替えられる構成にしました
カメラ・センサー・通信・AI判定・通知までを一体で設計する進め方は、オリジナル基板・電子回路設計と画像認識・AIカメラ開発の両方にまたがる、当社ならではの領域です。
開発の進め方
「みずばん」と同様に、まず通知サーバーと見守り画面をシミュレータ付きで作りました。カメラ3台分の7日間の履歴を生成し、夜間に動物が現れるイベントと、まれに人物が現れるイベントを一定間隔で発生させて、警戒スケジュール・AI判定・LINE通知の流れが正しく動くことを確認しています。写真は赤外線カメラ風の生成画像で代用し、実機がなくても画面の作り込みを進められるようにしました。
画面は、ヘッドレスブラウザで通知一覧の確認・端末の登録・スケジュール変更といった操作を実際に行い、スマホ表示とダークモードを目視で確認してから次の段階へ進めています。
費用の試算は、1台目が約1.5万円、増設1台あたり約1.2万円(部品費)に通信費が月数百円程度です。市販の屋外監視カメラが1台6〜7万円程度であることと比べ、複数の畑への設置を現実的にすることを目標にしています。
運用してわかったこと・今後
設計上の判断としていちばん大きかったのは、誤検知への向き合い方です。AIの判定を「通知するかどうかの門番」にするのではなく、人か動物かのラベルを付けて通知に添える方針にしました。判定できないときは通知する側に倒すことで、見逃しを避けています。
実機のファームウェア検証はこれからで、CAT-M通信での画像の分割送信は初回のログを見ながら詰めていく予定です。センサー端末のファームウェアから通知サーバーまでを一体で開発するフィジカルAIの実証プロジェクトとして、引き続き進めています。
あわせて読まれています
この内容について、具体的なご相談を承っています。まだ検討段階でも構いません。まずは会社とサービスの概要資料をご覧いただくこともできます。
お電話:070-8445-2324(平日9:00〜18:00)