農業向け田んぼ水位監視IoT『みずばん』開発
米農家の見回り負担を減らすため、田んぼの水位を遠隔監視するIoTシステム「みずばん」を自社で実証開発しています。
課題
- 複数の田んぼの水位確認に毎日の見回りが必要
- 携帯電波を使う既存品はランニングコストが高く、枚数分の導入が難しい
- 水位センサーの設置・保守が農作業の負担になる
実施したこと
- 各田んぼには省電力のLoRa長距離無線ノードを置き、LTE回線は集約ゲートウェイ1台のみに絞るコスト設計
- 圧力式水位センサーを地中の有孔管に収める方式で、代かきや除草作業と干渉しない設置方法を考案
- 中継ノードによるメッシュ構成で、山あいの圃場もカバーできるネットワークをシミュレーションで検証
成果
導入前の状況
米農家では、田植えから収穫までの間、複数の田んぼの水位を毎日見て回る必要があります。田んぼが点在していると見回りだけで朝の時間が消え、漏水や水門の閉め忘れに気づくのが遅れると収量に影響します。携帯回線を使う既存の水位センサーは1台ごとに通信契約が必要で、田んぼの枚数分をそろえるとランニングコストが大きくなります。また、水面に浮かべる方式や水中に立てる方式のセンサーは、代かきや除草の作業と干渉しやすいという声もありました。
システム構成と技術
- センサーノードは、920MHz帯のLoRaモジュールとマイコンを一体化した技適取得済みのモジュールを採用し、圧力式の水位センサーを組み合わせています
- センサーは地中約25cmに埋設した有孔管の底に収め、管に入ってくる水の圧力から水位を求めます。管は農作業の邪魔にならない位置に設置でき、実測値との差はアプリから入力するオフセットで校正します
- 通信は、各ノードがビーコンに同期して木構造で中継する多段のLoRaネットワークとし、LTE-M回線を持つゲートウェイは1台だけに絞りました。通信契約が1枚で済むため、田んぼが増えても月々の費用がほとんど変わりません
- サーバーは外部ライブラリに依存しないNode.jsと組込みデータベースで構成し、見守り画面はブラウザから確認できます
- 警報ロジックは、減水速度が1日50mmを超えると漏水の疑い(通常の減水は1日20〜30mm程度)、水口を開けて2時間水位が上がらなければ「用水が来ていない」と判定。中干しや落水の時期は水位系の警報を抑止します
- 将来の電動水門制御に備え、サーバーからノードへコマンドを配る下り通信の仕組みも実装済みです
- 機構は基板50×70mm、防水ボックス、地上1.5mの支柱、埋設する測定管まで寸法を確定し、KiCadで基板の外形・取付穴・部品配置ガイドを作成しています
こうした回路・基板・筐体・ファームウェア・クラウドの一体設計は、当社のオリジナル基板・電子回路設計の中核となる進め方です。集めたデータを業務に活かす画面側は業務システム開発で対応しています。
開発の進め方
ハードウェアの試作に先立ち、まずサーバーとシミュレータを作りました。12枚の田んぼを想定して過去7日分のデータを生成し、30秒ごとにライブで値が更新される環境で、漏水・閉め忘れ・通信途絶・用水が来ないといったシナリオが警報として正しく出るかを確認しています。画面や警報の考え方を先に固めることで、基板ができてから仕様を変える手戻りを減らす狙いです。
ハードは段階を分けて進めています。第0段階では市販の開発ボードとLoRaモジュールをWi-Fi経由でつないで机上で動作を確認し、次にLTE-M通信ユニットを加えて実際の回線で送受信を試します。ファームウェアは骨子まで作成済みで、実機での検証はこれからです。無線部は自作せず技適取得済みモジュールを使うことを前提にしています。
部品表の試算では、センサーノード1台あたり約6,600円、ゲートウェイ約13,600円(いずれも部品費)で、既存の携帯回線型センサーを枚数分そろえる場合と比べて大幅に抑えられる見込みです。
運用してわかったこと・今後
設計を進める中で分かったのは、センサーそのものよりも「どこにどう置くか」と「警報をどう抑えるか」が実用性を左右するということです。作業の邪魔にならない設置方法と、中干し期に警報が鳴り続けないロジックは、農家の方の運用を想像しながら決めました。
今後の予定は、ベンチ試作、冬の間に基板の第1版を製作し、翌年の田植えから12枚程度の圃場で実証を行う計画です。全体の仕組み・アプリの使い方・部品の役割・費用をまとめた平易な説明書も用意し、農家の方や自治体の方に説明できる状態にしています。
あわせて読まれています
この内容について、具体的なご相談を承っています。まだ検討段階でも構いません。まずは会社とサービスの概要資料をご覧いただくこともできます。
お電話:070-8445-2324(平日9:00〜18:00)